小学校の国際理解授業に出かけると、「どっちがどっち?」ゲームをすることがよくある。初めに1枚の写真を見せる。生徒はそれが韓国のものか、日本のものか、あるいはどちらにも共通かを選択する。例えば、焼き肉の写真。「それ韓国!」「いや日本だよ」「どっちにもあるから共通だよ」。意見が分れたりする。
生徒たちが決まって「ニッポン」と叫ぶものがある。ノッポという言葉だ。それに対して、「これは韓国語からきたの」というと、みな一様に驚く。「♪大きなノッポの古時計♪」。この歌にも出てくるノッポは韓国語から来た。「のぼる」も関係があるらしい。ノップは高い、ポは人を指す。背が高い人の意味だ。韓国語では、ウルボ(泣き虫)、モッポ(食いしん坊)などのように、ウル(泣く)、モック(食べる)の後にポ(人)を付けてそういう人を表す。
他にも韓国語が日本語になった例は多い。チョンガック(結婚してない男)が「ちょんが」(独身男性)に、伝統服のパジ(ズボン)から「ぱっち」(ももひき)など。スッ(純)チヨンガは童貞の意味になる。どれも古くからある韓国の伝統や習慣に由来する。「へえ〜韓国語から来た言葉があるんだ」。小学生たちは目をまん丸くして不思議そうにしている。
十数年前、私が大学院で日本の古典文学を研究していた頃、未解読だった万葉集の歌を現代韓国語で解読する本が出た。ほどなくして、韓国でも似たような本が出てブームになった。だが、言葉は変化する。7世紀の「日本語」で書かれた古典を現代の韓国語で解釈するのは無理がある。むやみに日本語と関連づけることは慎まなくてはならない。
ただし、言語学的に根拠がある語彙も少なくない。例えば、コム(熊)と「くま」、スッス(炭)と「すみ」、チョッ(乳)と「ちち」、トゥルミ(鶴)と「つる」など、関係性が明らかになっているのもある。奈良を韓国語のナラ(国)と解釈する人も多い。確かに、古代の朝鮮半島と日本は深く関係していた。こういう日本語と韓国語の関係が日本と韓国の人々の間で常識になってほしいと思う。
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