「ペ・ヨンジュンと福島のある女性」
韓国のドラマ「冬のソナタ」の主人公を演じたチェ・ジウに続き、ペ・ヨンジュンが4月3日初来日しました。羽田空港には5,000人もの熱狂的なファンが押しかけ、空港始まって以来の大混乱を引き起こしました。そして、スポーツ紙には、微笑みの貴公子、夢のなかの王子様・・・・・・といった活字が躍りました。今や「冬のソナタ」は「冬ソナ」、ペ・ヨンジュンはヨン様と親しみを込めて呼ぶようにまでなっています。
ところで、私の身近にも彼の熱烈なファンの女性がいます。年令は4O才代とだけいっておきます。普段は、物静かでエレガントな女性です。このイメージを打ち破る出来事が、昨年訪れたソウルで起きました。ソウルの街なかの電柱に貼ってあるペ・ヨンジュンのポスターを見つけた彼女は、突然その電柱に駆け寄り、頬ずり(?)をしようとしたのです。思いもよらぬ行動に、皆あっけにとられました。
何が、彼女をこのような行動に掻き立てたのでしょうか。「ペ・ヨンジュンと劇的な巡り会いがあったのよ」と後日、彼女が語ってくれました。劇的な巡り会いとは、彼女が韓国語を習い始めた時、偶然にも「冬ソナ」も始まったからだそうです。悲しいまでに美しい純愛の主人公を演じるヨン様の柔らかな物腰、甘いマスク、そしてあの微笑み・・・・・・ドラマが進むにつれ、日本の熟年女性を虜にしました。彼女も、そのひとりだったのです。
しかし、今回のペ・ヨンジュンを迎えたファンの熱狂ぶりを彼女は冷静に見つめていました。あの人達と私が一緒にされるのは、心外だと言いたげでした。ソウルでの出来事の際も「ペ・ヨンジュンの住む国に来て、同じ空のもとにいるだけで幸せだ」と言っていたのを思い出しました。「心のなかの王子様で良いのだ」と、自分に言い聞かせているようでした。でも、ある時は何とかヨン様に逢うことができないかと、韓国の知人に懇願したとも聞いています。今回も冗談交じりに、「東京に行かないのですか」と尋ねました。「遠いところからそっと見つめていたい」と言っていました。これが、本当のファンなのかもしれません。
いま、彼女は「韓国に恋している」と言ってはばかりません。ペ・ヨンジュンや韓国ドラマに夢中になっているだけでなく、韓国語の勉強にも一段と力が入ってきており、韓国に何度も出掛けています。さらに、日本と韓国の間にまたがる歴史にも関心が向いてきたようです。そして、家族も彼女の行動に理解を示し協力的です。自他共に認める韓国好き人間になってしまったようです。これも「冬ソナ」いや、ペ・ヨンジュンのお陰かもしれません。韓国を恋する気持ちが、さらに大きく膨らむのことを願ってやみません。
彼女が恋していたのはペ・ヨンジュンという俳優個人より、彼を通して韓国そのものに恋していたのではないでしょうか。「『冬ソナ』の主人公が、たまたまペ・ヨンジュンだったので、ファンになり夢中になっていたが、他のひとでもそうしていたでしょう」と語っています。
ドラマ自体も、複雑な人間関係や出生の秘密を絡ませ、何よりも切ない恋という心地よい響きに酔い、虜になったのでしょう。ファンの女性たちは、自らの青春時代のほろ苦い初恋や恋人との語らいの想い出をこのドラマに重ね合わせていたのでしょうか(彼女の場合は、どうだったのか聞いていません)。また、ドラマの背景シーンの美しさ、テーマミュージックのメロデイーもいやが上にも物語を盛り上げる心憎い演出です。日本では、今しばらく「冬ソナ」ブームが続くでしょう。これをきっかけに、多くの女性が韓国に関心を持ち、韓国に熱い気持ちを寄せて欲しいと願うのが、彼女の本当の気持ちなのかもしれません。多分ペ・ヨンジュンも、そう願っているでしょう。